コニカミノルタが取り組む5つの重要課題(マテリアリティ)の1つ、「健康で高い生活の質の実現」に大きく貢献するのがヘルスケア事業だ。コニカミノルタは1933年に自社開発・生産のレントゲンフィルムを発売以来、医療画像診断を通じて世界の医療に貢献してきた。「見えないものを見える化する」高度なイメージング技術を重要な柱に据える。なかでも今、世界に先駆けて開発した、生体内の動きを簡便なX線検査で捉える「X線動態解析技術」が医療界の注目を集めている。呼吸に伴う肺の動きを観察できる画期的なソリューションとして呼吸器内科や救急医療の現場で活用され始めている。ヘルスケア事業の最前線を上席執行役員ヘルスケア事業本部長の小林一博に聞いた。

目次

DXなくして医療品質の維持は不可能

コニカミノルタはマテリアリティの1つに「健康で高い生活の質の実現」を掲げる。その達成のため、ヘルスケア事業本部が中心となり、医療領域で革新を起こそうと取り組みを進める。

医療現場には様々な課題がある。先進国では、医療費増大による財政負担が重く、慢性的な医療人材不足で、人件費高騰や医療現場の疲弊も深刻化している。また、新興国では、医療インフラや医療人材が量・質ともに先進国に比べて不足している。

そこに新型コロナ感染症の流行が直撃した。「個々の病院・診療所での対応には限界があることが明らかとなり、遠隔医療や分散化医療のニーズが高まりました。今後、医療施設間の連携強化は不可欠です。AIやビッグデータ、クラウドコンピューティングなどを使った医療サービスの社会実装も加速するでしょう。今や、デジタルトランスフォーメーション(DX)なくしては、医療の品質を保つことが難しくなるはずです」。上席執行役員ヘルスケア事業本部長の小林一博は、医療の現状をこう分析する。

こうした事業環境を踏まえたコニカミノルタのヘルスケア事業について小林は、「写真フィルムの時代からデジタルの時代までを通じて培ってきた画像技術を活かして、『見えないものを見える化する』高付加価値イメージングに加え、IoT、パートナー企業との協業、スマートコミュニケーションの4つを戦略の枠組みとしています」と述べる。

「見えないものを見える化」する高付加価値イメージングと、医療IT、ソフトウェアの分野に重点を置く

「私たちが注力するのは、X線撮影装置や超音波装置などの身近なモダリティとIT サービスを進化させ、簡便な検査で高度な診療を可能にすることです。プライマリケアの領域で高度な診療を可能にする製品と、ITサービスの社会実装を進めることで、早期発見、医療費削減、患者QOLの向上に貢献します」。小林は取り組みの方向性をこう説明する。

国内でX線装置を導入している約5万軒の診療所のうち、4割に当たる2万軒以上の診療所とつながる医療機関向けIoTプラットフォーム「infomity」もその1つ。クラウドサービスを通じた診断支援や、遠隔読影、医療連携など、診療所のDX化を支援するサービスを提供している。今後は、infomityを診療所と患者と繋くサービス基盤へと更に進化させ、国民の健康寿命の延伸と、抜本的な変革を迫られつつある医療界への貢献を目指す。

上席執行役員ヘルスケア事業本部長 小林一博

形態診断から機能診断へ、教科書が書き変わるインパクトがある

「胸部診断の教科書が書き変わるかもしれない」。著名な呼吸器内科医がこうコメントしたコニカミノルタの技術がある。それが、X線画像診断に“動き”の情報を付加した「X線動態解析技術」だ。連続パルス撮影が可能なX線撮影装置を使って、1秒間にX線パルスを約15回照射し、十数秒間にわたってコマ撮りした画像を連続表示、得られた動画像に独自の画像処理を施して画期的な「見える化」を可能にする。これにより呼吸中の肺の動きを観察することができる。

「今まで見たことがなかった肺の動きが見え、驚きの一言に尽きる」

「この技術は医療のブレークスルーになる。絶対に普及させなくてはいけない」

X線動態解析の画像を目にした医師からはこんな声が次々に上がったという。

小林は、「これまでも透視撮影装置を使えば動態観察は可能でしたが、高価な装置と専用の撮影室で撮影する必要がありました。コニカミノルタのX線動態解析では、一般撮影用の撮影室で簡便に撮影することができます。15秒間の動態観察における被ばく量は、通常の胸部X線撮影2回分(正面・側面撮影)程度で、被ばく量を抑えたシステムを実現しています」という。

診断を容易にする様々な技術も盛り込まれている。「例えば、肺の疾患を診断する際、胸部の骨が重なって見えにくいのですが、コニカミノルタのX線動態解析では、肋骨や鎖骨を減弱し、病変を見やすくする『胸部骨減弱処理』が可能です。また、横隔膜の動きを定量化(グラフ表示)したり、肺野内の血管や肺胞といった組織の動きの変化を、高度な画像処理でカラー表示して可視化することで、今までの静止画からは得ることができなかった情報を提供します」(小林)。

「動き」を見える化する

BS-MODE(胸部骨減弱処理)

肺野内の鎖骨と肋骨を減弱し肺野内の視認性を向上

FE-MODE(周波数強調処理)

各構造物の視認性を向上させ動きの観察しやすさを追及

“動き”を定量化する

「DM-MODE(特定成分追跡処理)」

横隔膜の動きをグラフ表示

肺組織の“動き”に伴う信号値変化を抽出

PL-MODE(基準フレーム比計算処理)

呼吸に伴う肺野内濃度変化を抽出し表示。

PH-MODE(相互相関計算処理)

血管の拍動に伴う肺野内濃度変化を抽出し表示。

「コニカミノルタのX線動態解析は、『形態診断』を基本としていたX線画像に動きの情報を加えることで、『機能診断』へと進化させる技術です」と小林は熱く語る。このシステムで既に数百件に及ぶ特許を出願したコニカミノルタは、他社が簡単には追いつけない優位性を確保している。

ポータブル化で集中治療室でも使用可能に

レントゲン博士がX線を発見したのは130年前(1895年)のこと。この間、CT、MRIが発明された一方で、X線画像診断はフィルムからデジタルに代わったに留まる。コニカミノルタのX線動態解析はそんな現状を変えた。静止画よりはるかに多くの情報を持つ動画像を簡便に得ることができ、プライマリケアにおける診断を高度化する。

同時に、「X線動態解析技術は、重症患者や感染症患者の診断においても画期的なソリューションになりつつあります」と小林は述べる。

「一般撮影室向けにX線動態解析機能を搭載した製品を2018年に発売しましたが、医療現場からは、集中治療室の重症患者や感染症患者の呼吸状態を動画像で確認できるよう、ベッドサイドで使える機器にしてほしいという要望を多くいただいていました。

こうした患者様は、移動が難しいためにCTやMRIなどの精密検査を受けることが困難で、血圧、体温、脈拍、呼吸数などのバイタルサインを測定するモニタリング機器中心に、病態管理が行われています。患者様の胸部X線画像を取得できれば、他のモニタリング情報と併せて、経時変化を的確に捉えることができ、合併症の有無や重症化のサインを見逃さない病態管理ができるからです」

「コニカミノルタはこうした要望を受け、ベッドサイドでのX線動画撮影を可能にする回診用X線撮影装置を今年3月に発売しました。導入した病院では早速、新型コロナウイルス感染症で意識がない患者様の胸部動画像撮影に成功しました。人工呼吸器を装着し、撮影時に呼吸を止められない患者様においてもベッドサイドで撮影ができ、刻一刻と変化する呼吸状態を捉えることで、重症化、あるいは改善の徴候を迅速に把握できるようになったと評価いただいています」(小林)

AeroDR TX m01
AeroDR TX m01

医療関係者との連携で、新たな価値を共創

コニカミノルタはX線動態解析というイノベーションを医療現場で活用するため、医師や放射線技師ら医療関係者との連携を一層強化する考えだ。小林は「我々が提供する動態画像について、医療関係者に『こういう活用ができる』と意味付けをしていただくことが重要です。現在、世界中の医師や放射線技師、医学研究者の方々と、新たな価値の共創を進めています」と話す。

医師らの取り組みをきっかけに活用が進んだ先例もある。肺がんなど肺の手術だ。「これまでは手術を始めてから肺に癒着があることがわかると、急遽、胸腔鏡手術から開胸手術に変更することがありました。手術時間が長くなるので患者様の負担が増し、医師や看護師の業務フローや手術室の占有時間など医療資源にも影響します。事前にX線動態解析を行うことで、肺の動きから癒着の有無がわかりますので、適切な手術計画(術式や手術時間)を立てることが可能になったと評価をいただいています」(小林)

整形外科分野でも価値の共創が進む。米国では整形外科領域でトップクラスの医療機関と共同で研究を行い、重力のかかる立位の状態で手術前後のひざの動きやリハビリ後の状態を確認するといった研究が進みつつある。

医療界にイノベーションをもたらすX線動態解析技術――。コニカミノルタはこれまで培ってきた独自の画像処理技術と顧客との信頼関係をベースに、こうした技術を一層進化させ、医療界の課題解決と進歩・発展に貢献していく。

上席執行役員ヘルスケア事業本部長 小林一博
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