2023年9月1日、東京・八王子市の東京都立南多摩中等教育学校で、中学2年生を対象に、レゴ®ブロックを活用した特別授業が行われた。授業を実施したのは、コニカミノルタ プロフェッショナルプリント事業本部のビジネス開発グループである。同グループの主なミッションは印刷業界のサプライチェーン変革。出張授業はデジタル印刷需要を新たに作り出す活動の一環として、今年に入って立ち上げた。

目次

レゴを使ってイメージを言語化し、気づきをもたらす

南多摩中等教育学校は中高一貫校で、1年次(中1)から5年次(高2)までの5年間、地域課題の発見と探求を行う「フィールドワーク」を年間を通して実施している。その一環として、同校では今年9月、当社と連携して、2年生を対象に出張授業を実施した。授業のタイトルは、「カタチが想いを伝えるSDGsワークショップ」。レゴ®ブロックを使って創造性を引き出す「レゴ®シリアスプレイ®(以下、LSP)」という教育手法が用いられた。

授業の様子をまず紹介しよう。

体育館の床に座った生徒160人は4人1組のグループに分かれ、各自にLSP専用のレゴブロックのセットが1セットずつ渡された。

LSPではファシリテーターが提示するお題に対して1人が1作品ずつ作っていく。まずは「タワー」を作る練習をした後、「未知の生物」を制作してグループ内で発表。その後、制作した「未知の生物」を「自分の隠れた才能」に見立て、グループ内で1人ずつ説明した。

「想像力を使うと、同じ作品に違う意味を付けることができます。つまり、皆さんには『意味を作る力がある』ということです」。生徒たちにこう語りかけたのは、プロフェッショナルプリント事業本部PPHマーケティング統括部PPマーケティング部ビジネス開発グループ・グループリーダーの宮木俊明。宮木はLSPの認定ファシリテーター( Trained facilitator of LEGO® SERIOUS PLAY® method and material )でもある。

出張授業を企画・運営したプロフェッショナルプリント事業本部ビジネス開発グループ・グループリーダーの宮木俊明(左)と同グループの藤原崇史(右)

出張授業を企画・運営したプロフェッショナルプリント事業本部ビジネス開発グループ・グループリーダーの宮木俊明(左)と同グループの藤原崇史(右)

練習を兼ねたアイスブレークが終わってここからが本番。最初のテーマは「10年後の最高の自分」を作るというもの。ここからは作品を作った後、各自が作品の説明をするだけでなく、他の生徒が「質問する」というプロセスが加えられた。

「質問を受けたら、『この作品が自分にとって大切なものだとしたら、どんな意味があるか』を考えて言葉にしてみてください」と宮木の声が飛ぶ。生徒たちに “自分には意味を作る力がある”ことを体感してもらうのが狙いだ。

休憩と講義を挟んで、「10年後に作りたい最高の何か」を作るワークが行われ、さらに「グループ内で全員の作品を並べ、配置を考えて1つの作品を作る」というチャレンジが行われた。一人ひとりが独自の観点で作り上げた作品であっても、お互いがよく理解しあい、つながりを考えることで、個々の作品の魅力を損なうことなく、より大きな作品、大きなアイデアを作り上げる体験ができたようだ。

生徒たちの作品例 限られた同じパーツから作られたとは思えないほどバラエティに富んでいる

生徒たちの作品例 限られた同じパーツから作られたとは思えないほどバラエティに富んでいる

他人を否定せず対話を重ねれば、SDGsの課題を解くこともできる

ワークショップの途中で行われた講義には、宮木と同じビジネス開発グループの藤原崇史が登壇、コニカミノルタのSDGsの取り組みを紹介した。

藤原は、アナログ印刷で用いる刷版が高価なため、必要量より余分に印刷しがちなこと、1枚の刷版からは同一の印刷物しか制作できないために大量廃棄につながりやすいことを説明。コニカミノルタが、無駄なく、1枚1枚内容を変えられる “緑の魔法の筒”、すなわち感光体ドラムを用いるトナー方式のデジタル印刷機を印刷会社に提供していることを解説した。

「一人ひとりに最適なメッセージを届けることができるデジタル印刷によって、コミュニケーションの活性化だけでなく、在庫や廃棄の削減に繋がり、SDGsに大きく貢献できます」と藤原。さらに「光の三原色(RGB)」やカラー印刷に使われる「色の三原色(CMYK)」について、実演を交えながら解説すると、生徒たちは真剣な眼差しで聞き入っていた。

授業の最後に宮木は、「SDGsに取り組む上で対話の手法は重要です。SDGsの課題は複雑で『あちらを立てればこちらが立たず』になりがちですが、相手の立場や意見に配慮しながら全体の調和を作り上げることで必ず解決につながります。今回の授業では、このことを皆さんに体験してもらうことができました」と意義を語った。

さらに、「SDGsのような複雑な問題に取り組むときは、自分の考えを表明することが大切です。『否定されるのでは』と不安に駆られることもあるでしょう。でも、勇気を出して意見を述べ合い、それを基に皆で1つの物語を作ろうと努力すれば、必ず問題は解決できます」。こんなメッセージで締めくくった。

ものに意味を乗せることで、誰もが自信と誇りを持てる

授業後のアンケートからは、生徒たちが充実した時間を過ごした様子が伝わってきた。「自分が活躍していけるという希望が持てる」、「他人の人の意見を否定せず、自分の意見を出すことで、よりよい世界を作れると肌で感じ、自信が持てるようになった」など、中学2年生とは思えない回答も寄せられた。

大人たちも勇気づけられたと宮木は言う。「ワークショップを通じて子どもたちが成長する姿を見て、明るい未来を描くことができました。また、私たちのビジネスの根幹について話したとき、子どもたちが好奇心で目を輝かしてくれたことに誇らしさを感じましたし、出張授業をやってよかったと思いました」

今回の出張授業に立ち会った教員の言葉にも耳を傾けてみよう。「レゴを使った対話の手法は、今回限りではなく、今後の授業の中で定着させていきたい」と語るのは、南多摩中等教育学校のフィールドワーク授業チームのメンバーで、今回の授業を統括した石橋めぐみ教諭。

「中学2年生はまだ世界が狭いので、勉強も含めて『何のためにやらされているんだろう』という感覚があります。その意味で今回の出張授業は、『なんとなくで済ませず、あえて作品の意味を自問し説明する』やり方が印象的でしたし、“ものに意味を乗せる”という視点は素敵だと思いました。日頃の行動がSDGsや社会貢献に繋がっていく。生徒たちがそのような視点で物事を捉えられるようになるとよいと思います」(石橋氏)

「ものに意味を乗せるという視点は素敵だ」と語る南多摩中等教育学校の石橋めぐみ教諭

「ものに意味を乗せるという視点は素敵だ」と語る南多摩中等教育学校の石橋めぐみ教諭

宮木らは、出張授業の成果や思い出を生徒たちに届ける取り組みも実施した。作品を自分たちで撮影してもらい、印刷して後日、プレゼントするというもの。一人ずつ異なるメッセージをカタチにする点で、デジタル印刷の真骨頂と言える。

撮影した画像の集約・共有には、当社の学習支援システム「tomoLinks」を活用した。画像ファイルを集約する手間や記憶媒体の準備などが不要で、生徒たちが持つタブレット端末から瞬時に集約・共有が可能。「生徒たちは難なく使いこなしている様子で安心できました」(藤原)という。

デジタル印刷の良さを伝えたいという思いで出張授業をスタートした

同グループの出張授業は今回の南多摩中等教育学校が2校目。2021年にコニカミノルタが八王子市と「社会課題解決に関する包括連携協定」を締結したことも後押しとなって実現した。ちなみに第1回の出張授業は今年2月、青森県立三戸高校で高校1年生を対象に、学習塾PlusTとの協業により実施した。

出張授業を始めた理由について宮木はこう語る。「デジタル印刷ならではの価値や、デジタル印刷が環境負荷の少ない印刷方式だということを世の中に発信し、当社が世界中で展開しているSDGsに向けたアクションの1つだということを伝えたい。そのため、学校教育の場に情報を届けようと考えたのです」

より良い世界の実現に向けて同グループが注力しているのが “AccurioDX”という活動だ。これは企業が抱える課題の解決に、デジタル印刷の特徴を生かした新たな価値を提供し、サステナブルに社会貢献する仕組みを創出する取り組みである。今回の出張授業もAccurioDXの一環として企画された。第1回の出張授業で協業した学習塾PlusT もAccurioDXの共創パートナーだ。

一方、授業のツールとして用いたLSPについて宮木はこう語る。「イメージや思いを言葉で表現するのは容易ではありません。でもレゴを使えば形にでき、自分が本当に思っていることへの気づきが生まれやすいのが特徴です。もともとは社会人向けに、企業の課題解決や対話のツールとして活用されているものですが、中学生など若年層であってもその有効性が確認されていることから、一連の出張授業にも採用しました」

今後、ビジネス開発グループでは出張授業をどのように展開していくのか。「私たちの場合はデジタル印刷がテーマですが、コニカミノルタのほかの事業領域をテーマにすることや、他社に門戸を開くことで共創のきっかけにするなどの発展形も視野に入れています。SDGsをはじめ、社会の様々な営みを当事者が誇りをもって伝え、子どもたちがそこから学んで、自信を持って生きていくきっかけになれば幸いです」と、宮木は思いを語った。