コニカミノルタの中長期の利益成長をけん引するテーマ「成長の芽」が芽吹き始めた。第一弾は、インテリジェント再生材。このほど既存の再生プラスチック技術を基盤に、マレーシア・ペナン州拠点の再生プラスチック材料の開発と生産を担うMJ MATERIAL TECHNOLOGY SDN BHDとの協業によって、バージン材(石油由来のプラスチック)相当の物性確保や再生プラスチック材料の安定供給を実現した。2026年度には量産化に入り、アジアの電子機器・家電市場から開拓を始め、2028年度には再生プラスチック材料市場での10%以上のシェア確保を狙う。

目次

再生プラスチック材料に山積する課題の解決へ

再生プラスチック材料の市場が、急速に勢いづきそうだ。発端は、欧州における資源循環関連の法規制強化である。2020年代以降、環境意識の向上と法規制の強化を追い風に伸び続ける。アジアの電子機器・家電市場を例に取れば、市場規模は2031年度までの間に、現在の2倍近くである約900億円にまで膨らむと試算される。

市場の急速な伸びが見込まれる中、コニカミノルタは独自技術を生かし、次の3つの課題意識からインテリジェント再生材の開発に挑んできた。

まず、再生プラスチック材料の品質を担保するには純度が高く劣化の少ない原材料が求められてきたが、そうした高品位の原材料の流通が不安定である、という点だ。コニカミノルタ 執行役員 デジタルワークプレイス事業本部・プロフェッショナルプリント事業本部 生産調達統括部 統括部長の鎌田隆史氏と、経営企画部 事業開発戦略グループの小松徹氏はこう訴える。
「再生プラスチック市場の伸びに伴う需要増を背景に、原材料である廃プラスチックの奪い合いが生じ、調達が安定しません。価格高騰さえ招いています」
その結果、必然的に再生プラスチック材料の供給も不安定になりがちになる。

次に、原材料である廃プラスチックの物性にばらつきがある、という点がある。廃プラスチックはどれも、元はプラスチック製品であることには変わりない。しかし使用時期や状況はそれぞれ異なるため、劣化度合いに差が生じ、廃プラスチックの物性もばらばらと異なる。従って、そのまま再生プラスチック材料に生まれ変わらせても、物性にばらつきが生じ、品質を損ないかねない。

再生プラスチック材料
再生プラスチック材料を活用する中でブランドオーナーは数々の課題やニーズを抱える。それらに技術の力で応えるのがインテリジェント再生材である

最後は、ブランドオーナー側で再生プラスチック材料を用いて部品を製造する際、成形品質の確保に手間がかかるという点である。

先述のとおり、再生プラスチック材料はバージン材に比べ、物性にばらつきがある。そのため、成形段階で見た目や性能上の不良が発生しやすくなる。さらにブランドオーナーや部品ごとに成形の仕様が異なるため、成形条件を個別に設定する必要がある。そのため、成形段階で不良を発生させないようにするには、ブランドオーナー側の技術者が、自らの経験に基づき試行錯誤を重ねながら、成形条件の検証を繰り返す必要があった。その結果、量産化には多くの工数を要したのである。

MJマテリアルとの協業で課題を乗り越える

コニカミノルタはこれら3つの課題を、再生材メーカーである明文産業(愛知県豊橋市)のグループ会社でマレーシアに拠点を置くMJ MATERIAL TECHNOLOGY SDN BHD(以下、MJマテリアル)との協業で乗り越えた。供給、物性、成形品質、それぞれの安定という3つの特性を持つ再生材を開発し、「インテリジェント再生材」とコニカミノルタが名付けた。そのうえで、MJマテリアルが2026年春に開設する新工場で量産化する道筋をつけた。

MJマテリアルは、原材料の廃プラスチック回収から再生プラスチック材料の販売まで一貫して行う再生樹脂メーカーである。廃プラスチックの回収は、米国、英国、オーストラリアなど世界各地の20社と業務提携を結ぶ。さらに新工場には、廃プラスチックの選別ノウハウを活用した生産ラインを設置し、後続工程で使用する廃プラスチックを効率的により分ける。MJマテリアルの調達ネットワークの広さと選別ノウハウが、原材料の調達の安定を確保する。

選別の後続工程である混練では、選別された廃プラスチックを高温で溶融し混ぜ合わせることで再生プラスチック材料に生まれ変わらせる。コニカミノルタはこの工程に独自開発のセンシング・AI技術を活用した。廃プラスチックそれぞれの物性を識別し、どのような条件で混練すればバージン材領域の物性を確保できるのか、AIで条件設定を行う。
「この工程で再生プラスチック材料として物性の安定を確保できるようになります」
小松氏はこう説明する。

独自開発のセンシング・AI技術を活用する
廃プラスチックを回収・選別し、成形前の再生プラスチック材料にするプロセスにおいて独自開発のセンシング・AI技術を活用する

成形品質の安定を確保するのは、コニカミノルタ独自開発の成形AIソリューションである。ブランドオーナー側からの提供データを基に、部品材料として用いる再生プラスチックに最適な成形条件をAIが提案することで、成形難易度が高い部品でも顧客の求める品質を備え、安定して量産できるものにする。そこには、同社が複合機事業でブランドオーナーの立場から再生プラスチック材料の成形に試行錯誤を重ねてきた成果が生きる。

インテリジェント再生材は、MJマテリアルがマレーシア国内のクアラルンプールに開設する新工場で製造し、ブランドオーナーに販売する。同社はそこで販売収入を得る。これに対してコニカミノルタは、MJマテリアルに独自開発のセンシング・AI技術を提供し、販売収益に応じたライセンス収入を得る。

加えて、コニカミノルタはブランドオーナーから成形に関するデータの提供を受け、AIによる最適な成形条件の提案という形で成形安定化を支援する。

インテリジェント再生材を「成長の芽」に

小松氏は事業性をこう展望する。
「MJマテリアルのアセットを活用することで設備投資を抑え、高収益化を実現します。同時に、成形安定化支援という形でお客様との継続的な関係性を構築し、好循環の事業モデルを確立します」

コニカミノルタのビジネス上の位置付けは、「成長の芽」の一つである。「成長の芽」とは、GX(グリーントランスフォーメーション)とAI技術と既存技術を組み合わせ、中長期をにらみ確立していこうとする成長を狙う技術テーマだ。再生プラスチック材料のほか、ペロブスカイト太陽電池用バリアフィルムやバイオものづくりプロセスモニタリングを掲げる。

再生プラスチック材料では、コニカミノルタはGXやAI技術と組み合わせる既存の製造・活用技術を15年ほど前から培ってきた。鎌田氏は説明する。
「再生プラスチック材料を自社製の複合機に初めて採用したのは、2011年度です」
さらに3年後には廃材由来のHDPE(高密度ポリエチレン)を開発し、自社製複合機用トナーボトルの材料として採用してきた。

2018年度には、再生プラスチックに占める廃プラスチックの割合を示すPCR比率(PCR : Post-Consumer Recycle)を最大37%まで引き上げた。PCR比率が高いほど、バージン材が含まれていないことになる。資源循環関連の法規制ではPCR比率引き上げを狙っていることから、コニカミノルタは廃プラスチックの割合を高めることを目指してきた。

再生プラスチック材料の製造におけるMJマテリアルとの協業は、こうした技術開発の過程で早くも2014年度に始まっていた。両社の再生プラスチック材料に関する技術・ノウハウを組み合わせ、ブランドオーナーの要望に応えられるものを供給するのが狙いだ。

技術的な蓄積の下、コニカミノルタは2024年度には再生プラスチック材料を他社製品にも供給し始めた。

その一つは、NECプラットフォームズ製の家庭用Wi-Fiルーターだ。供給する再生プラスチック材料は、使用済みガロンボトル由来の再生ポリカーボネートである。NECプラットフォームズではこれを、外装部材として質量比で約40%使用する。
もう一つは、サトー製のラベルプリンター。供給する再生プラスチック材料は、使用済みのエンターテインメント機由来の再生ABS樹脂である。サトーではこれを、筐体部材として質量比で約40%使用する。

そして今、これら知見の蓄積と、コニカミノルタとMJマテリアルとの協業の成果が、インテリジェント再生材という「成長の芽」の一つとしてマレーシアの地でようやく芽吹こうとしている。

ブランドオーナーにインテリジェント再⽣材
コニカミノルタとMJマテリアルのアセットを組み合わせ、さらに独⾃開発のセンシング・AI技術を導⼊することで、顧客であるブランドオーナーにインテリジェント再⽣材という最適な価値を提供する

中長期の市場成長をとらえ、28年度にシェア10%以上

マレーシアには、「地の利」が見込める。

まず、国を挙げて再生プラスチック材料の活用を産業化する方針を固めている点だ。
「東南アジア諸国では廃プラスチックの輸入業者に厳格なライセンス制度を適用しています。また法整備が進み、外資企業の参入が容易です」
MJマテリアル社長のWeng Wenbin氏は説く。

社会に価値を提供
MJマテリアルが開設するクアラルンプールの新⼯場にてインテリジェント再⽣材の⽣産ラインを稼働させ、社会に価値を提供していく

次に輸出入の拠点である港湾を近くに持つ点である。新工場の近くにはコンテナの取扱高で世界トップクラスのクラン港が立地し、工場との間を結ぶ高速道路網も整備済みである。東南アジアの主要な市場との間のアクセスに優れる。

また文化的には、英語と中国語の2カ国語が通じるメリットも大きいという。Wenbin氏はこう語る。
「従業員やステークホルダーとのコミュニケーションを円滑に行えることも、マレーシアの新工場で再生プラスチック材料を製造する優位性の一つです」

インテリジェント再生材で狙う市場はまず、コニカミノルタの知見を最大限に生かせると見るアジアの電子機器・家電市場である。市場規模は冒頭記したように、約500億円(2025年度)から年8~10%で成長し、約900億円(2031年度)にまで膨らむと見られる。併せて欧州や北米の同市場にも展開する想定しており、全体の市場規模は2031年度で約1800億円の見込みだ。

インテリジェント再⽣材の価値
アジア向けの約500億円の電⼦機器・家電市場から参入し、欧州向けの電⼦機器・家電領域まで適⽤を広げる。2031年度は約1,800億円の市場規模に対してインテリジェント再⽣材の価値を訴求する

成長市場を相手にインテリジェント再生材の販売を担当するMJマテリアルでは、社長のWenbin氏は短期の目標を、まずは年間売上規模100億円と掲げる。
この規模の年間売り上げを達成するのに必要な原材料の廃プラスチックは、年間2万~3万t相当の見込みである。Wenbin氏はこう語る。
「現状でも、それだけの規模を確保することは可能です。今後の規模拡大にも対応できる見通しです」

一方、MJマテリアルからライセンス収入を得る立場のコニカミノルタでは、小松氏はこう意気込む。
「具体的な目標は量産開始以降に設定していくことになりますが、2028年度にはアジア向けの電⼦機器・家電用途の再生プラスチック材料市場でのシェア10%以上の確保を狙います」
中長期には自動車市場の開拓も狙う。更に小松氏は語る。
「日本を代表する自動車メーカーの1次・2次部品メーカーや電子・電機メーカーなど十数社にヒアリングを実施したところ、全ての企業から高い関心を得ました。すでに試作品を開発し、評価を進めています」

「成長の芽」第一弾のインテリジェント再生材は早くも、成長市場から確かな手応えを得ている。

成長の芽

*Imaging Insightのこちらの記事も併せてご覧ください。

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