「高収益企業への回帰」をうたった2023年度からの中期経営計画。不確実な環境下でもスピード感を持って計画を実行するのは「人」であり、経営チームから現場に至るまでの多様な人財・組織だ。コニカミノルタでは目下、事業の選択と集中を進める一方で「プロフェッショナル人財への変貌」を人財基本戦略に掲げ、従業員はもちろん経営層に対しても強化施策を実施している。事業の構造変化を支え、コニカミノルタ全体が事業の成長をけん引する人財、組織へと変貌することをねらう。
人財ポートフォリオも選択と集中へ
中期経営計画の達成へ向けて、事業構造の変化と合わせた人財ポートフォリオの転換を急いでいる。特に、インダストリーやメディカルイメージングといった強化すべき領域・事業への人財リソースの集中である。
そこで、社外からのキャリア人財の獲得と、社内の他事業からのシフトに拍車をかける。高度専門人財の採用は獲得競争が年々熾烈さを増しているが、その中で2023年度上期に計画の過半数を獲得した。社内人財のシフトについても、同じく上期中に前年1年間の実績を上回った。
こうしたスピーディな人財戦略は、採用チームと事業部門が一体となって取り組まなければ実現できない。相手が人であるだけに単なるマッチング以上の工夫を凝らす。たとえば事業の担当役員が自ら本人と面談すれば事業戦略や熱意もいっそう伝わる。面接も候補者の見極めの場から、動機付けの場へと面接官の意識を変えれば自ずと言動も変わる。強化事業の成長を支える人財リソースの集中により、成長を一層加速させていく。
経営チームに変革を求め、全社への波及効果を狙う
同時に、全社にわたる「プロフェッショナル人財への変貌」のための施策を打っていく。人事を担当する岡慎一郎・常務執行役(冒頭写真、2023年12月開催のKonica Minolta Dayにて)は、プロフェッショナル人財の定義をこう説明する。優れた知識・知見や経験に裏打ちされた独自のスキルをもち、課題解決のために自律的に考え、行動する人財――。「多様なプロフェッショナル人財が交わることで、イノベーションが生まれ、エンゲージメントおよびレジリエンス力が向上する。そして、会社の持続的成長につながっていくことになる」(岡)。
代表的な施策のうち、「組織力の強化」「多様性のあるマネジメント育成」という2つのカテゴリーを見ていこう。
まず組織力の強化、すなわち組織・個人のポテンシャルとパフォーマンスの最大化である。その重点課題として、まず経営チーム自らの変革を置く。コニカミノルタでは社長を含む役員と役員候補に対して「レジリエンスプログラム」を導入している。これは、医学・脳科学・心理学的な観点から、人と組織が最高のパフォーマンスを出すために本質的に必要な要素について学び、それを1年間かけて習慣化するプログラムだ。具体的には、身体・情動・思考・精神性の4つの健康領域について学びと実践を繰り返す。これによって、経営判断の質の向上、経営会議の議論の活性化、組織横断的な連携の風土醸成といった効果も見られる。
「組織の変革と成長への回帰を目指す場合、一般的には次世代の若手人財の育成と活用に目が向きがちになるが、我々としては、変革はトップから起こすことが重要だと考える」(岡)。経営層自らが変革することで、その影響を次世代リーダー、そして会社全体に波及させて、コニカミノルタ全体がプロフェッショナル人財へ変貌する根幹になることを期待する。
並行して取り組むのは、対話を通じた組織づくり・職場づくりによる従業員エンゲージメントの向上施策である。別ブログ記事「『会社が変わってきたと実感!』若手の発案が実を結ぶ」で、厳しい局面にもかかわらずエンゲージメントスコアが向上していることを書いた。「従業員のエンゲージメントをいっそう高めていくには、当社グループ全体、各事業本部、そして各職場として、それぞれのレベルでそれぞれの課題に取り組むことが重要だ。これらの体系的な活動を通じて、コニカミノルタらしさに根差す会社の文化や風土は醸成される」(岡)として、施策をさらに充実させる。
海外国籍人財からリーダーを選抜し育てる
多様性のあるマネジメント育成のカテゴリーにおいては、グローバル人財に焦点を当てる。全グループ約4万人のうち4分の3を占めるのが日本国籍以外の人財であり、その活用の優先順位は高い。そこで、1つ目のカテゴリーでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連で実績のあるスイスのビジネススクールIMD(International Institute for Management Development)と協業し、グローバルビジネスリーダーの育成に着手した。全グループの優秀人財を可視化し、その中から選抜された人財に対して育成プログラムや経営トップによるコーチングを提供する。さらに個別育成計画の策定を経て、国境を越えたアサインメントを進めている。
「例えば、ヨーロッパのハイポテンシャル人財を日本本社に呼び、全社の中期経営計画策定のメンバーに加えた。この人財は、現場の意見を計画へ反映させたり、海外販社施策との整合性を取ったりするなど、目に見える貢献をしてくれている」(岡)。ほかにも、アメリカとオーストラリアの間で戦略的な人財ローテーションを実施するなど、プログラムの成果は着実に表れてきた。
女性リーダーシップ人財の育成にも取り組む。コニカミノルタはグローバルで見ると従業員の約3割が女性で、管理職に占める女性の割合は20%を超える。日本国内は9%台だが、さらなる伸長を目指す過程にある。そこで、2023年度からグローバルで活躍する女性の中から次世代リーダーを選抜・育成するプログラムを展開している。
昨今、人的資本経営の文脈でも人財戦略に対する注目度が高まっている。人財の価値を最大限に引き出し、ビジネスに貢献してもらうには何が必要か――。ここで紹介した人財強化施策を柱としつつ、常に考え続けながら適時適切な取り組みを実施することが、持続的な成長、企業価値向上につながるはずである。
*Imaging Insightのこちらの記事も併せてご覧ください。