コニカミノルタは経営層と現場との対話の深化、および従業員エンゲージメントの向上を目的として、インナーコミュニケーションの強化を推進している。取り組みを始めて1年あまり、具体的な成果も表れ始めた。四半期決算ごとに開催する社内向け説明会「CEO LIVE!」の取り組みを中心に、マネジメントと社員の双方向コミュニケーションがもたらすエンゲージメント向上施策の事例を紹介する。

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若手社員が企画する社内向け決算説明会「CEO LIVE!」

「ここ数年、会社の業績が思わしくなく、社員の自信や信頼が揺らいでいたように感じた。このような状況を変えるため、私たちのような若手に声が掛かった。最初は戸惑いもあったがやはり自分たちが動くしかないと思った。そこで、2022年度から役員と社員の双方向のコミュニケーションを醸成し、全社員がやる気になって、自ら行動に移すような情報発信となるようトランスフォームを続けてきた」。IRチームのメンバー、入社10年目の今井智佳子はこう振り返る。

コニカミノルタは、社長や役員が全グループ社員に向けて決算や事業の戦略を直接説明する狙いから、社内向け決算説明会を2022年度からオンラインで開催。より活発なコミュニケーションを促すために、2023年度からは四半期イベント「CEO LIVE!」と名付け、会場とオンラインを合わせたハイブリッドで実施している。後半に行われるQ&Aコーナーでは、社員がどの拠点からでもアクセスして質問することができ、役員はその場で回答。今や、マネジメントと社員の双方向のコミュニケーションの重要な場として定着している。

今井(写真左奥)をはじめとする20~30代前半の若手社員が改革をリードする

今井(写真左奥)をはじめとする20~30代前半の若手社員が改革をリードする

「CEO LIVE!」が現在の形式で開催される以前は、「GMM(グループ・マネジメント・ミーティング)」の名称で、役員が管理職のみを対象に業績や会社の状況、マネジメントの考えを発信していた。形式も社長からの一方向の説明がなされるもので、管理職経由の伝達では一般社員全員に同じニュアンスで届かないことが課題となっていた。一方、四半期ごとの決算説明の範囲に留まらない重要な経営メッセージは、その背景やトップの意思も含めて全グループ社員の間に十分に浸透させる必要があった。例えば、新中計に掲げた「高収益企業への回帰」を目指す決意や、2023年度の「過去から決別し、新しいスタートを切る」といったメッセージなどである。これらへの理解があってこそ、コニカミノルタが会社として向かうべき「実行力の強化と加速」が実現可能になる。

そこで、20~30代前半の若手社員から成る企画チームを発足させ、GMMを全従業員対象にした双方向のライブコミュニケーションの場に変更したり、親しみやすい名称に変更したりするなど様々な改革が進んだ。冒頭の今井はその推進役となって動いた。

社員からの質問も活発に、現場のモチベーションを刺激

今井ら企画チームは、「社員は何を知りたいと思っているのか」「なぜ会社の状況やマネジメントの考えが社員に伝わらないのか」といった点について、社員のアンケートコメントなどを基に議論を重ね、課題の洗い出しを行った。その結果、「社歴の浅い社員目線での資料作成」「がんばった人をみんなで称える」「各事業・機能での理解促進」「双方向コミュニケーションの拡大」という4つの取り組みが必要だと考え、社長・役員に提案し、実行に移していった。

「スライドの説明はポイントを絞って平易な言葉を使い、図解でわかりやすくすることを心がけた。また他事業のことを知りたいと思っている社員の要望に応え、社長以外の役員による事業説明会を開催。事業に関する資料は専門用語も多く、若手には難しい内容だったが、役員や担当者と議論を重ね、わかりやすいプレゼン資料を作成した」(今井)。この事業説明会は多くの社員から会社全体の状況についても理解が深まると高評価を得ている。

説明用スライドはポイントを絞り、平易な言葉と分かりやすい図解で社員の理解を深めた

説明用スライドはポイントを絞り、平易な言葉と分かりやすい図解で社員の理解を深めた

「がんばった人を称える」ために、CEO LIVE!で社内の好事例の紹介も始めた。その内容を英語、中国語に翻訳し、全グループ社員にメッセージを届けることで、紹介した現場の社員から「モチベーションがぐっと上がった」とのコメントも届いた。

「Q&Aコーナーは、導入当初は社員からの質問がぽつぽつと出てくる程度だった。でも、回を重ねるごとに活発になり、会社が変わってきていると実感している」と、今井は嬉しそうに話す。多くの質問が寄せられ時間切れになることもあり、その場で回答できなかったものは後日、大幸社長や担当役員の返信を社内イントラで掲載するほどの盛況ぶりだ。大幸も、若手社員によるGMMの変革に予想以上の手応えを感じるという。

「CEO LIVE!」の活動を通じて、たくさんの学びがあったと今井は話す。「若手の目線が入るからこそ、誰にでもわかりやすい説明や双方向のコミュニケーション拡大につなげることができた。私たち若手社員でも、行動を起こせば会社に変革を起こせるという自信も得られた」と胸を張る。

CEO LIVE!は社長、役員の人となりを知る場にもなっている

CEO LIVE!は社長、役員の人となりを知る場にもなっている

自ら考え、動くプロフェッショナル人財に変貌

コニカミノルタはでは、2023年度より事業収益力強化を柱の1つとした新中期経営計画がスタートしている。その実現のカギを握るのは言うまでもなく人財・組織であり、人財基本戦略には「プロフェッショナル人財集団への変貌」を掲げている。コニカミノルタが求めるプロフェッショナル人財とは、「優れた知識・知見や独自のスキルを持つ」とともに、「課題解決のため自律的な考えに基づき行動できる人財」を指す。

マネジメントと社員の間にある垣根を取り払い、双方向のコミュニケーションを促進することで社員は当事者意識を高め、「自分たちも会社に貢献している」という思いが自信と信頼の回復につながり、ひいては自ら考え、動くようになる。「CEO LIVE!」は、企画チームのメンバーはもちろん、全グループ社員にとって、プロフェッショナル人財への第一歩を踏み出すきっかけとなっている。

社長の大幸にも企画メンバーは率直に自分たちの考えを伝え、内容を決めていく

社長の大幸にも企画メンバーは率直に自分たちの考えを伝え、内容を決めていく

社員の意識変革はエンゲージメントスコアの向上にも表れた。グローバルのグループ社員4万人を対象に実施したエンゲージメントサーベイ“Your Voice”によると、2023年度の回答率は90%を超え、スコアは6.8となり前回よりも0.2ポイント上昇した。また満足度・ロイヤリティスコアについても2021年度以降、順調に推移する。これらの数字は、会社の厳しい局面の打開を期待させる。

もちろん、こうした数字の変化は「CEO LIVE!」と若手の頑張りだけでなく、若手の声を受け入れたマネジメント側の度量の深さがあってこそのものだ。タウンホールミーティングをはじめとした双方向のコミュニケーションが活発化し、トップとの対話機会が充実したこともある。大幸は社長就任直後より国内外の拠点を訪れ、社員との双方向のコミュニケーションの場を積極的に作っている。2023年度は海外拠点とのコミュニケーションにさらに注力し、対話した社員は延べ5000人を超える。具体的な成果が見え始めたインナーコミュニケーション強化の取り組みにより、さらなる社員エンゲージメントの向上とサステナビリティ経営の向上を目指していく。2年、3年と今後も継続してくことで、大きな流れに育つはずである。

*Imaging Insightのこちらの記事も併せてご覧ください。

関連リンク

Konica Minolta Day | CEO LIVE!~双方向コミュニケーション強化にむけて~ (magicalir.net)